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村上春樹的医師生活 Returns

1 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 18:30:58 ID:5/R5MeAe
この巨大な蟻塚のような医療社会主義社会にあっては医局を見つけるのはさほど困難な作業ではない。
その仕事の内容や教授について贅沢さえ言わなければ、ということだ、もちろん。


2 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 18:32:55 ID:5/R5MeAe
ごく控えめに言って僕の診さされた急患の九割はまったく軽症で、救急で来なくてもよかった。
医療費と人的資材の無駄遣い。
でも僕は何も考えずに、殆ど機械的にきちんきちんと救急外来をさばいていた。

3 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 18:34:27 ID:5/R5MeAe
やれやれ。今日もまた天文学的な数の需要に天文学的な数のエビデンスを重ね合わせながら患者を診る。
25メートルプールをターンして泳ぐように、カルテをまず半分、次にまた半分にする。そうして半分が終わるとまた半分とおもって続ける。

4 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 18:35:01 ID:5/R5MeAe
おーい、キズキ。ここはひどい医局だよ。

5 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 18:37:53 ID:5/R5MeAe
全く厚生省の人間が何を考えているのか私には見当もつかない。穴を掘ったら
それを埋めろといい、埋めたらまたそれを掘れと言う。迷惑するのはいつも私の
ような現場の人間なのだ。

6 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 18:38:51 ID:5/R5MeAe
「医師会と勤務医は同じ人間の右手と左手だと祖父はいっていたわ」

「どういうこと?」

「つまり医師会が勤務医を代弁することは技術的には殆ど不可能なのよ」

「技術的にはね。
 でもとりあえず加盟するだけなんだ。きっとうまくいくはずだ」

「でもね、もし」と娘は言った。
「医師会が開業医の多数決で操られていたとしたらどう?
 つまり開業医のほうが実地診療を知っているんだとか屁理屈をこねて」

私は彼女の言ったことについて考えをめぐらせてみた。
信じられない話だが、まったくありえないことではなかった。
「もし君の言うとおりだとしたら、ひどく難しいプロジェクトになるだろうね」
と私は言った。
「両方を競りあわせることによって、団結をいくらでも遅らせることができる。
 力を伯仲させておけば厚労省はストをされる心配もない」

7 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 18:40:03 ID:5/R5MeAe
「祖父は医師会の中でQOMLプロジェクトを進めているうちにそのことに気づいたのよ。
結局のところ医師会は勤務医の重要性を軽視した団体にすぎないのよ。
祖父はもしこのままプロジェクトをつづけたら事態はもっとひどいことになるだろうと
予測したの。日本の医療体制はむちゃくちゃになってしまうだろうってね。
そこには抑制と歯止めがなくちゃいけないのよ。
でも医師会にも厚労省にもそれはないわ。
だから祖父はプロジェクトを降りたの。」

8 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 19:12:18 ID:5/R5MeAe
「どうしてだ?君はこの間医局から脱出するって約束したじゃないか?一体何が
君の心をそれほどがらりと変えてしまったんだ。茄子かい?」
「それももちろんある。でもそれだけじゃない」
民間医局はため息をついた。そしてもう一度空を仰いだ。

「君は当直予定表を修正したんだな?そして彼女とふたりで病院で働くこと
に決め、俺を追い払うつもりなんだろう?」

「もう一度いうけど、それだけじゃないんだ」と僕は言った。
「僕はこの奴隷医療システムを生み出したのが一体何ものかということを発見したんだ。
君は奴隷医療システムを作り出したのが何ものか知りたくないのか?」

「知りたくないね。俺は既にそれを知っているからだ。この奴隷医療システムを作り出した
のは、勤務医自身だ。医局制度から関連病院派遣から、非現実的な当直スケジュールから、
何から何までだ。このタコ部屋も、夜間コールもだ。それくらいのことは俺だってわかるんだよ。」

「僕には僕の責任があるんだ。僕は上司から勝手に振られた仕事とはいえ、自分の
作り出した奴隷制度をあとに放り出していってしまう訳にはいかないんだ。
君の考え方は正しいと思うし、君と別れるのはつらい。でもここは僕自身が
住む世界なんだ。主治医制は僕自身の思考の流れの主治医制で、奴隷システムは
勤務医自身が作り上げたシステムなんだ」

「止めても無駄なことはよくわかった」と民間医局は言った。「しかし勤務医としての生活は
君が考えているよりずっと大変なものだよ。生き延びるための勉強は厳しいし、救急当直は
長くつらい。無能な上層部の下につくとなかなかそこから逃れられない。延々と
実りのない作業を繰り返さなければならないんだよ」
「そのこともよく考えたんだ」
「しかし心は変わらないんだね?」

9 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 19:12:59 ID:5/R5MeAe
「僕はこの大学勤務医の悲慘な労働環境を生み出したのが一体何ものかということを発見したんだ。
君はこんな労働環境を作り出したのが何ものか知りたくないのか?」

「知りたくないね。
俺は既にそれを知っているからだ。
こんな労働環境を作り出したのは、大学病院自身だ。
無意味やたらに多いカンファレンスから、
理不尽にブチギレまくる指導医から、
時間外の採血は土下座したってやってくれない看護師どもから、
何から何までだ。
この、朝の散歩ついでに救急外来にやってくる老人たちも、
雀の涙ほどもない馬鹿げた給与体制もだ。
それくらいのことは俺だってわかるんだよ。」

10 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 19:14:59 ID:5/R5MeAe
「夢とか理想なんて忘れた」と医師は言った。
「まったくなかったわけじゃないんだが、途中からそんなもの必要無くなってしまったもんだから、忘れた」

11 :名無しさん@おだいじに:2007/03/24(土) 22:47:23 ID:5/R5MeAe
「でもひとつグッド・ニュースがある」と教授は言う。
「僕らは君を迎えることにした。君は大学病院の一員になる。君にはたぶんその資格がある」

僕は思わず教授の顔を見る。
「つまりそれは、僕が大学病院で奴隷労働させられるってことなんですか?」

12 :名無しさん@おだいじに:2007/03/26(月) 03:36:22 ID:GeKXm/Er
医師は除細動を行い、息をひそめ、何かが起こるのを待った。
でも何も起こらなかった。
彼は看護師を眺め、家族を眺め、患者の方を眺め、足もとの地面を眺め、それから空を見上げた。

13 :名無しさん@おだいじに:2007/03/26(月) 03:37:48 ID:GeKXm/Er
「患者を診るのって好きか?」
「今やってることに関しては好きとも嫌いともいえないですね。
そういうレベルの仕事じゃないから。
でも有効な外来での患者のさばき方というのは確かにありますね。
コツとか、ノウハウとか、姿勢とか、力の入れ方とか、そういうのは。
そういうのを考えるのは嫌いではないです」
「明快な答えだな」と彼は感心したように言った。
「志が低いと物事は単純なんです」

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